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【東京駅丸の内駅舎保存・復原】

東京駅丸の内駅舎保存・復原
設計者 建築施工者 建築主
東日本旅客鉄道(株)
東京工事事務所 一級建築士事務所
(株)ジェイアール東日本 建築設計事務所
鹿島・清水・鉄建
建設共同企業体
東日本旅客鉄道(株)
■建築概要
建設地: 東京都千代田区 用  途: 駅・ホテル・ギャラリー
構  造: 鉄骨煉瓦造・RC造・一部S造・SRC造
■審査評

 1914年に辰野金吾設計で建設された東京駅丸の内駅舎は、1945年の戦災で屋根と内装が焼失し、戦後、応急的に2階建てに復興されたまま60年が過ぎた。解体や高層化が検討されて時期もあったが2003年に国の重要文化財に指定されることで、建物の安全性・機能性の向上を図りつつ、将来に向けて保存・活用を実現することとなった。

 保存・復原に際しては、既存の鉄骨内蔵煉瓦造の耐力や変形性能を確認した上で構造体として利用すると共に、戦災で失われた3階部分やドーム屋根を復原した。外壁、屋根、建具は厳密な考証により、建設時の意匠に戻すことを原則としつつ、新たに復元された箇所がわかるようにするという、今日の保存・修復の思想に基づいた工事がなされている。免振化に関しても周到な計画と高度な工事がなされ、免振層カバー上を多くの利用客が通行する個所では、地震時にも安全な通行が可能となるような独特の工夫もなされている。3階部分復原に伴い、ギャラリーやホテル機能の配置を変更することによって、駅、ホテル、ギャラリーという機能が、これまで以上に十全たる形で利用できるように計画上の工夫もなされた。

 保存・復原された駅舎は、社会的にも大きな話題となり、東京のみならず日本の建築文化、都市空間整備に対して、重要な意義を持つ。文化性・技術性・歴史性全ての面で極めて重要な作品であり、それ故、「防災、福祉、都市景観などの見地から都民生活の向上を図り、特に秩序ある都市の建設に貢献し、併せて地域環境の維持向上に寄与したと認められる作品」という東京都知事賞の主旨にふさわしい作品であると判断され、東京都知事賞に選定された。

(小林克弘)