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【フレンシア玉川田園調布】

フレンシア玉川田園調布
設計者 建築施工者 建築主
(株)竹中工務店東京一級建築士事務所 (株)竹中工務店、日本建設(株) 相互住宅(株)
■建築概要
建設地: 東京都 世田谷区 用  途: 共同住宅
構  造: RC造 延面積: 1,990m2
■審査評
 高級住宅地である田園調布、東横線の線路際(空堀状に切り込まれた線路であるが)の端正な集合住宅である。まず、走り去る電車の車窓からの見え方は、三つに分節化されたボリュームと連続する壁柱のリズム、奥行きのある正方形フレームが特徴となるファサードによって、電車のスピードに耐えうるシンプルな存在感を持って印象づけられる。一方、これは同時に全面や側面道路を歩く視線からも、周辺住宅地のスケールとの調和を考慮したものであり、10mの高さ制限にもより、威圧感のない親和的なプロポーションとして気持ちの良い住環境を形成している。当然法規上の緑化規定や地域のルールを遵守したもので、敷地コーナー部分の公開された緑地やパーキングを隠す壁面緑化など、常緑と落葉とを組み合わせることで季節感を演出するなど、地域環境に配慮したきめ細かい外部空間となっており、道行く近隣住民だけでなく、居住空間からも楽しめる緑化計画となっている。中廊下型の住戸配置でありながら、分節化や中庭の巧みな配置により、明るく快適な通路と玄関まわりを実現させ、さらに三方向からの採光と通風を確保するなど合理的で設計密度の高い優れた作品である。パブリック空間に散りばめられたシェークスピアの戯曲からの引用された文言やエレベーター前に置かれたベンチやエントランスホールの鏡などは場所の固有性を高めることで、散漫になりがちな日常を引き締める効果をあげている。

(栗生 明)