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【万華鏡の家】
 
 
設計者 建築施工者 建築主
(株)セルスペース 市川保工務店 古株 均
 
■建築概要  
建設地 長野県・軽井沢町
RC造、木造
専用住宅
延面積 83.81m2
 
■審査評
 旧軽井沢奥、小高い丘一帯に広がる別荘地に建てられた週末住宅である。
 敷地は、浅間山を望む20度ほど下り勾配のある西側傾斜地となっている。
 建物は、既存樹木の伐採や斜面の造成を抑えるため1階を基礎一体壁式コンクリートでコア状にし、2階床版を2〜2.7mはね出し、その上に木造を載せ浮かせている。
「木に囲まれると落ち着き、よく眠れる」というオーナーの気持を尊重したら、変形六角形の平面になったという。
 生活居住の場となる2階は、浅間山の眺望のきく西面のテラスをもち、玄関を高くスキップフロアーで下げながら隣り合う居間、食堂、和室の3室がある。周囲の雑木林、変化する陽の光を取込む手法として、外壁の各辺を交互に壁と開口にし、随所に配置された鏡
  壁で室内のどの方向からも外部の実像と虚像を映り込ませる演出は巧みであり成功している。鏡壁は、部屋の奥行きの狭さを和らげ空間の広がりに役立ち、放射性、回転性から万華鏡のような効果が演出されていて楽しい。1階の寝室からは、2階テラスを深い軒にして目前の木立に抱かれる感覚がある。
 外観は、斜面に合わせ緩い片流れの屋根、外壁を木々に合うガリバリウム鋼板濃灰塗装仕上で覆い、厚さ100〜200mmの断熱材を全周に充填し、内部の床は畳の和室以外をフローリングで統一、木製ペアーガラスサッシを嵌め込んでいる。合板壁に木リブ天井は、材料の種類を押さえシンプルに仕上げられ、省エネルギーにも役立っている。自然との関りをバランスよく纏められていて好感の持てる週末住宅である。
(福島 賢哉)