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東京建築賞選考委員会 委員長 鈴木博之  
 
 東京建築賞は今年30回目という、ある意味では記念すべき時期にさしかかった。今回の応募作品は27作品であり、昨年度に比べ1割の減少であった。昨今の経済状況の反映か、このところ応募作品数が少なくなりつつあることが気にかかる。できるだけ多くの作品が応募されるように望みたい。確かに作品を応募するには資料の整理、展示用パネルの作成、そして実地審査になった場合には所有者との調整や現地での説明など、多くの手間と費用がかかる。それを思うと応募に躊躇するのも無理のないところかもしれないが、そうした手間をかけても、審査を受けることによって得られるメリットは大きい。資料の作成による自己客観化、審査の過程での評価、そしてそこでの質疑から得られるであろう新しい視点、最後に受賞に結びつくならば、そのことによる客観的評価と達成感。無論、現地審査にいたる前に落選ということもありうるが、それを恐れていては世界の拡大はないであろう。是非とも多くの作品が寄せられ、さまざまな問題提起を示していただきたいと思う。
 さて、今回の応募作品は、例年のことではあるが一般部門が多く、戸建住宅部門が少なかった。具体的には戸建住宅部門4点、共同住宅部門6点、一般部門17点の応募であった。このうち戸建住宅部門は全作品、共同住宅部門は5作品、一般部門は12作品を現地審査の段階に選出した。それらを複数の選考委員が手分けして訪れ、現地審査を行った上、全委員による
  合議の上で入賞作品を決定した。このプロセスではさまざまな議論が交わされ、最終的な入賞作品が決定された。結果は戸建住宅部門では優秀賞2点、うち深大寺の三世帯住居が東京都知事賞となった。共同住宅部門では最優秀賞1点、優秀賞1点、奨励賞2点が入賞し、一般部門では最優秀賞1点、優秀賞2点、奨励賞3点という結果になった。入賞数は応募作品数に見合ったものであったが、奨励賞においてはできるだけ特徴のある作品を選出することが心がけられた。
 それぞれの作品に関する評価は後の選評に譲ることとして、ここでは全体的な作品傾向について、概観しておくことにする。一時期のバブル経済の産物のような建築はその数を減らし、環境問題、周囲との調和に配慮した建築が多く見られるようになったことは喜ばしい変化であった。しかしながらその中においても技術的な創意、考案が追求されている作品があり、それらは総じて高い評価を得た。建築がこれからの都市景観・都市環境に及ぼす力は十分に設計に組み入れられなければならない。将来を見据えた建築が生まれつづけることを願いたい。
 入賞作品を設計した事務所のなかには、大型の組織だけではなく、小さな組織もかなり見られる。これからも小さな組織も力を発揮して都市の基盤となる建築を多く設計していって欲しいものである。そしてそのことが東京都建築士事務所協会全体の活性化につながることを期待したい。
     
 
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