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設計トラブル事例(その3)

予算がオーバーしているのに工事に入るなんて危険です!

指導委員会

1.経 緯

 本会のホームページから支部長に相談され、支部長が相談者と面談した結果、支部長の判断により苦情解決業務に申込をされた案件です。 苦情対象事務所は本会の会員でした。
 新築の設計監理による診療所併用住宅で、工事監理に入ってからの相談でした。
 相談者の仕事である診療日の関係などにより、結果として面会には至りませんでした。
 電話での相談ということになりました。

 工事費の予算に対して、図面が完成して現説を行ってみると業者からの見積金額は各社共当初予算に対して40%以上も予算を大きくオーバーしてしまいました。
 そこで設計事務所はVE案を作成して10%オーバーの金額で請負業者を決定してしまい着工してしまいました。
 VE案を作成することは、よくあるケースです。今回の問題はこの後なのです。
 まだ10%オーバーしていますが、工事中に再度のVE案を作成して当初の予算に合わせ、これを設計事務所の責任で減額するという条件で着工してしまったのです。

減額が実行できなければ、設計事務所がそれを負担するという契約となっていたのです。
 更に設計図書にも不備があった様で、VE案どころではなくなり、現場の工程も遅れはじめ竣工予定にも間に合わなくなってしまいました。 そのうちに、建築主である相談者と設計事務所と連絡が付かなくなり、今回の相談となりました。

2.電話での苦情解決業務

 相談者はかなり立腹されていました。 何しろ、苦情対象事務所は事務所を閉鎖してしまっていて連絡がとれなくなっていたのです。 従って、会員資格もなくなってしまいます。この時点での支部長からこの報告はまだ受けておりませんでした。 しかし相談者の怒りは納まりません。相談者いわく「こん様な者を野放しにすると、第二の姉歯となる。 何とか処罰する方法はないのか?」残念ながら本会にはその様な権限はありません。

3.終了

苦情対象事務所が閉鎖をして存在しませんので、その段階で苦情解決業務は終了となりました。

考察

経緯からしか判断できませんが、予算がオーバーしているにも係わらず工事に着手することは通常は考えられません。 強引に業務を受注したかったのではないでしょうか。
 それにしても設計完了段階での当初の予算との金額の差が開きすぎています。
 VE案に頼るのではなく、予算が絶対条件であるなら設計変更による減額をするべきであり、予算を考慮した設計が求められます。
 管理建築士講習の紛争事例にもあった内容と同じとなってしまいました。

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