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設計トラブル事例(その2)

報酬が発生する場合は口頭でもはっきり確認を!

指導委員会

1.経 緯

 相談者のご家族の方が本会のホームページを見て苦情解決業務を申込された案件です。
 相談者と苦情対象事務所の所長さんとは同じ町内会で、以前から顔見知りの関係でした。
 苦情対象事務所は以前は本会の会員でしたが、現在は退会しています。
 従って、本会からの文書または口頭による説明や資料の提出を求められても、それに対する応答義務はありません。

 相談者に建築計画があることを苦情対象事務所が知り、自分の事務所で建築計画をすると相談者の自宅を訪問して申出てきました。 そして相談者の了解を得て作業を開始致しました。
 しかし、何回か打ち合わせをしながら基本計画を進めておりましたが、相談者が納得する計画案は出来てきませんでした。 基本計画の実費は些少ですが支払ってありましたので、計画を打ち切ることを苦情対象事務所に通知しました。
 ここまでは比較的よくあるケースだろうと思います。
 ここからトラブルが発生し、今回の申し立てとなり「苦情相談申込書」が提出され相談者と面談することになりました。

2.相談者との面談

 相談者は本会のホームページを見て申込みされた弟さんと2名で来られました。
苦情対象事務所の所長さんとは、同じ町内会で顔見知りと言っても特別に親しい関係ではないとのことでした。
 相談者の方は新しい建築士法を勉強されていて、重要事項説明や書面の交付もなかったと言っておられましたが、 昨年の春からの建築計画ということで、法施行前でしたのでその点は問題ありませんでした。
 何枚かの図面を持参されましたが、「これで全てですか?」と確認しましたが、「これが全てです」という回答でした。完成された基本設計図がなかったからです。

 全てが未完成で、中には計画のための補助線のみの図面もありました。従って基本設計は完成していない状態でした。
 話を聞くと、既に数十万円の実費も支払っているが分かりました。
 そして、これから先の設計業務を継続依頼することに不安を感じられて、お断りをしたということでした。 すると、非常に高額な基本設計料を請求されており、相談者が被告となって支払請求をされたとの事でした。 係争中の案件ですから、苦情解決としてはこれで終了となります。

 相談の内容は、苦情対象事務所が以前は本会の会員であり、現在は退会されていることも知っておられました。 依頼者は、対象事務所がどの様な会員であったかを知りたくて申し込みをされたとのこと。 しかし、そのことは個人情報に抵触しますので、お答えしかねるということでご理解を頂きました。

3.終了

今回の案件については、依頼者と面談中に係争中であることが分かり、その時点で終了となりました。
 相談者と苦情対象事務所との信頼関係の欠如や感情的な問題までは解決することが出来ません。 苦情解決業務は、あくまでも技術的な観点から解決に向けての助言をすることにあるのです。
 今後は相談申込書を受け付ける時点で、係争中であるかどうかの確認をする必要かがあると感じました。

考察

 既に支払ってある金額の10倍近い金額を請求され、困り果てて相談に見えられました。
 こうした基本設計的な業務を行う場合は、書面を取り交わすことが困難なケースが多いでしょうから、 無料なのか有料なのかを口頭でも依頼者に伝えておくと、こうしたトラブルはある程度は防げると思います。

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